精神の糧としての音楽

  

 ミューズが微笑みを与えた音楽 3

 バッハ作曲 ゴールドベルク変奏曲。
 この曲は平均律第一巻、音楽の捧げものと並べて、バッハの最高傑作と考えられています。技術的にも非常に完成度の高い曲ですが、ぼくとしては、この曲の「精神性の高さ」を評価したい。
 この数年、「精神性の高さ」について考えてきました。「精神性の高さ」をことばで説明するのは困難ですが、人は「精神性の高い」音楽を聞きたいと思っている(めんどうなことに専門家はその限りではありません)。
 クラシック百選などというシリーズに入っている曲はたいてい「精神性が高い」と思って差し支えないと思います。なかにはそれほど「高く」はないものも含まれているでしょうけど、「精神性」が感じられない曲、というのは少ないようです。ありていに言えば、「精神性」が感じられない音楽に、人はお金を払わない。

 この曲はときどき作者の意図がわかりにくくなる箇所があります。たとえば、第3変奏曲の3小節目。

 右手の2つのメロディが一体となってしまい、わかりにくい。視覚的にもわかりにくいし、「2つのメロディだ」と聞き分けることはほとんど不可能です。それを弦楽合奏に編曲したものでは、

上の楽譜のように、2つの楽器も割り当てることによって、楽曲の意図がハッキリします。そういう意味で、弦楽合奏に編曲された版で聴いてみることをおすすめしたい。

※ 動力機械の発明で、人間の運動能力の価値が低くなり、いま、A.I. の進歩により人間の知的能力の価値が低くなろうとしています。次に注目されるのが、ここで言う「精神性」になるのだろうな、と予感しています。音楽だけでなく、文学や美術も、「精神性」とは別の「知性」の面で評価されている作品が、現時点ではたくさんあります。アカデミズムに毒された専門家が「知性」的な作品を持ち上げているように思いますが、これからそういう作品は淘汰されていくでしょう。また、A.I. は「精神性」を扱えないけれども、「知的」な作品は作ることができるから、「精神性」のない作品は芸術ではない、と人々は気づくことになります。

January 21, 2024
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森 孝雄のアレンジ/Published sheet music


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   “The Day Life was Born” Sheet Music version
・ハープと弦楽合奏のための作品『雪の妖精』
・“Snow Fairy” for a harp and strings































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