ピカソとシェーンベルク
 ピカソとシェーンベルクの共通点はいろいろ思い泛かびます。キュービズムと12音音楽という技法的な共通点もありますが、専門家の評価と一般的な評価のあり方がとても似ています。ぼくは音楽家ですので、シェーンベルクを通じてピカソを判断しているのですが、彼らはどちらも、音楽が/絵が好きすぎる。普通の人に較べ、「好きすぎる」ので、ちょっとしたことでも面白く感じるのだと思います。創作家にはときどきこのタイプが見られますが、19世紀までは、鑑賞者によってそれが淘汰、あるいは是正されてきました。20世紀になって、なぜそのタイプの作家が生き残ったのかというと、アカデミズムがその理由の大半を占めると思います。
 アカデミズムの世界に住んでいる教授、評論家などはだいたい自分のやっている分野が「好きすぎる」ので、微妙な味わいも面白い、と感じ、飽きることもありません。一般の鑑賞者は、権威による喧伝にあっとうされて、「すごいものなのかなぁ」くらいの感想しかもたないでしょう。
 それから「面白い」という言葉、近現代の芸術を評価する時によく使われる言葉ですが、人はほんとうに感動したとき、圧倒されたとき、「面白い」などという言葉は使いません。「すばらしい」「いい」などという言葉がすなおに出てくるものです。
 シェーンベルクの音楽性を、ぼくはあまり評価していませんが、彼の編み出した12音技法には大きな影響を受けました。今でも、曲を書く時のひとつのよりどころとなっています。
Aug. 1, 2014